360の今後について

2021-04-10 日本語 構想

future-of-360

2016年から高千穂でやっている「シェア型飲食店 360 Shared Kitchen」のお話。

後継者募集開始

3月にrelayで後継者募集の記事を出して頂いてから、早1ヶ月。ありがたいことに色んな方面から反響を頂いています。とはいえ、まだ成約には至っておらず、引き続き募集中の状況が続いています。

保健所からの指摘

そんな折、高千穂保健所から連絡を頂きました。ざっくり要約すると「食品衛生責任者(私、伊藤)が遠方在住の今の状況は容認できない」との指摘で、状況改善されないと営業許可の継続が難しくなるようです。1年間かけてじっくりと探す予定だった後継者を早急に見つけないといけなくなってしまいました。

直近の対応

私が「食品衛生責任者」である「360」は、一旦、4月末で廃業とします。(対価を頂いての)飲食物を提供しないレンタルスペースとしては暫く運用が可能ですので、場所貸しビジネスに移行しつつ、次の動きを考えていこうと思います。

疑問1: 管理とは?

今回は、私自身、本業と子育てが忙しく手が回らなくなってしまっていたこともあって、管理が不十分という点では保健所と見解が一致しており、それがrelayでの後継者探しの動きに繋がっていました(relayの取材時点では宮崎で新店の計画にも言及していますが、もう少し本業と子育ての体制を落ち着けてからかな…という気もします)。ですので、以降は今回の指摘に対する反駁ではなくて、今後、社会のルールはどうなるんだろう?という問題提起の意味での単なる考察です。

「衛生管理責任者」というのは、あくまで責任者であって、お店の清掃から在庫の消費期限チェックから、調理の隅々まで全部自分でやる人、という意味ではないはずです。店舗に通勤しなきゃいけないとか、何時間以上滞在しないといけない、というのはガイドラインに明記されてるようには見えませんでした。リモートワークという言葉が定着しつつある昨今、たとえば、Webカメラや遠隔監視と記録が可能な温度計などで厨房の様子を把握し、Zoomなどのツールを使って現地のスタッフと密にコミュニケーションをとり、伝達事項はSlackやLINEなどのツールで共有する、といった業務の組み立ては、専門家でなくてもある程度の知識があれば実現出来そうです。あらゆる店舗で可能か?と言われるとそうではないかもしれませんが、かといって、責任者を常に現地に置くだけで衛生管理が完璧に出来るか?という問いと同じく例外を探しても仕方のないことだと思います。「ただなんとなくそうしてきたから」というだけで、新しい手法を拒絶するべきではないと考えます。管理者がリモートに存在する店舗というのも実現可能ではないでしょうか?

疑問2: 営業とは?

そもそも「飲食店営業」の定義とは何なのかを色々調べています。「食品を調理し客に飲食させる」などとは書いてあって調理の内容に言及されているものは多いのですが、どうしたら「客」になるのかが曖昧です。 その場でお金を払う行為があったら間違いなさそうです。事前にオンラインで予約と同時に決済まで、というのもまだ分かりやすいですね。 月額でスペースのメンバーになってもらって、その人は自由に食べて良い、というルールだったら?この辺もまだ営業と呼べるでしょうか。 では、集まったメンバーの誰かに調理を手伝ってもらって、その人に皆がお礼を支払いするという場合は?これってもはや只のパーティのような。夜な夜なパーティをやってるスペースとしたら営業許可不要?

Airbnbが一気に普及して法改正が行われるまでの間にも起こっていたことですが、客を呼んで宿泊させる、という行為と、インターネットで知り合った友達が遊びに来るので、空き部屋に泊まらせてあげてお礼を貰った、という行為の線引きをどこにするのかという難しさがあります。不特定多数に値段を表示していたら営業行為?であれば、ログインした一部の”友達"にしか見えない場所に非公開で置いとけばOKでしょうか?でも、"非公開"なページをみせてあげたい友達を数万人〜数百万人収容してしまえるのもネットの世界です。お金を貰ったら営業行為?であれば、仮想通貨やそれに類する電子データを交換しておいて、場所や時間をずらして、別の事業体が、一定のレートでそれを現金化するというのはどうでしょう?(あ、これは実例がありますね…怖くて真似できませんが)

自分でも色々考えてきたし、色んな意見や可能性も聞いてきましたが、いまいちまだ分からない部分です。新しいコミュニケーションのツールや決済の手段などに、どうやって法律や慣習が追随するのか、という問題になるのかと思います。

そもそもの収益モデルと構想

ここまで読んじゃった人なら、「360」ってなんなのって少しは気になってるかもなので、もう少しだけ。

具体的な数字はrelayからの申込者限定となっているため公表できませんが、 Airbnbのような何らかのシェアリング系のサービス提供を経験されている方なら想像がつくかもしれません。正直、このお店単体ではビジネスとして成り立たないです。 例えば、シフトの入っていない日はオーナー自ら営業して開店頻度をあげるとか、なんらか副業をもって、それとの組み合わせでシナジーを出すとか、組み合わせが絶対に必要になってくると思います。

ようするに、めんどくさいです。でも、それを言い出すと、生きてること自体めんどくさくないですか…?子どもの時は、色んな仕組みやら、いつ使うのかも分かんない記号やら歴史やら沢山勉強させられて、大人の顔色を窺わされて、大人になったらなったで、責任だルールだなんだと色んなプレッシャーをかけられて。だけど、本来、あらゆるルールや仕組みというのは、自分たちやその先に来る人達が、もっと良く生きられるようにと考え出されたもののはずなんです。政治も法律もそうだし、町内会のちょっとした決まりごとみたいなのもそうです。いつの間にかそれが、ずっと昔からそこにあったものみたいになって、壊せない、触れてはいけないなお化けに成長してしまっていることがあります。守るべきものと作り変えていくべきもの、それが何なのかを小さな空間を共有しながら一緒に考えられる仲間が集まったらいいな、と思って作ったのが始まりでした。特に田舎は(他所から来た人から見たら)謎ルールだらけです。うまく適応できそうかどうか、しばらく試してみる場も必要だなと感じていました。

自分では今ひとつシナジーを大きくできず、個々の店長の個性に頼りっきりの状態でしたが(場所貸し業と揶揄されても仕方有りません)、もっと上手に回せる人が必ず居るはずと考えています。誰かが決心してくれたらとても嬉しいですが、そうでないにしても、5年近くの運用に使ってきたシステムのノウハウを活かして、こうした新しい形態のシェアリングビジネスを支援するプラットフォーム作りという本業に近い部分で、なにかしら再チャレンジできたら良いなと思っています。